ありふれた小さな絆でいいから

 僕が用を足して席に着き、そうこうしてるうちに列車のドアが開き、そこにいたのがさっきのおっさんがきょろきょろと誰かを捜してる様子。まさか、と思ってるうちにおっさんは僕を発見し、いちもくさんに向かってきました。そして開口一閃「てめー!さっきはよくも覗いてくれたな!警察につきだしてやるから来い!!」とおっさんが真っ赤な顔で怒鳴りちらしました。その覗いたの1フレーズにとてつもない不快感を覚えて僕は「・・・・・・は?覗いた?いや、おじさん、確かにノックしなかった僕も悪いけど、鍵をかけなかったおじさんも悪いでしょ?それなのにいきなり警察ってことはなくないかい?」ととりあえず怒りをおさえて、紳士的にあくまで僕のなかでですが、言葉を返しました。
 しかしおっさんの怒りは収まるどころか、更に激しさを増し「てめェ誰に向かって口聞いてんなら!このバッチが見えねーのか、あァん!?」と襟についたバッチを僕に見せつけました。心の中で僕は「おいおい、なんだ、あっち系のおっさんか?つーか酒臭いし、やっかいなの相手しちゃったなあ・・・・。」と思いながら、ふとおっさんが誇らしげに突き出した金のバッチを見てみると・・・・『○工業』・・・・あれ?これって普通の会社じゃあないか?と思案にふけってるとなにやら、周りの僕の会社の同僚達が何やらざわつきだしました。
 そう、なんとその車両の全部が僕の会社の同僚達で埋め尽くされていました。中にはビジュアル的にも気性もあっちの方に近い人も居るわけで、僕がおっさんに絡まれてるのを只で見てる訳はなく、案の定「おい、おっさん、うちの若いのが何か失礼したかい?」と我が職場で一番の強面の方がおっさんの肩を掴み、一番怖い顔で睨み付けました。と同時に席から次々と同僚達が立ち上がり、おっさんの顔がみるみる、赤から青に変色していきました。
 「解った、解った、解った!・・・・・。」と訳の解らない捨て台詞を残しておっさんは足早に去っていきました。そこで一件落着と言いたいところなのですが、そのおっさんが去ってからも何か釈然としない僕をよそに、周りの同僚達が怒りだし、当の本人よりも怒っていました・・・・・・。

 こんな感じなんです、ね?オチが無いでしょ・・・・・。